企業再生

13年赤字の会社が、なぜ1年で黒字になったのか?

私が2023年に買収した会社は、群馬県にある13年連続赤字の企業でした。
欠損金は約2,500万円、借入は7,000万円。 M&A担当の会計士からは、「0円でも引き取るのは厳しい」と言われるような状態でした。

ただ、私はこう思いました。 「一度“無理”と言われた案件を成功させたい」──。 そんな気持ちで、この会社の再生にチャレンジすることを決めました。

結果は、1年で黒字化。 何をしたのか?大きく分けてやったことは3つです。

① ゴミだらけの事務所を“空気が変わるレベル”で綺麗にする

まず取りかかったのは、事務所の空気を変えることでした。
ゴミが溜まり、空気が澱んだ空間では、人も数字も腐っていくからです。

私は専門のクリーニングチームを立ち上げ、徹底的に掃除と修理を行いました。
見えるところを直すだけでなく、「空気の流れ」を作り直す意識で動きました。

使っていなかったスペースは整理し、貸し出しによって年間1,000万円の利益を生み出す資産に。
DIY+補助金で約100万円で改修完了──本来なら1,000万円規模の工事も、知恵と判断で乗り越えました。

掃除を徹底するようになってから、社員の行動も変わり始めました。
物が整理され、情報がオープンになり、不正を“できない空気”が生まれたのです。

100万円未満で下のような空間になりました。そして毎年120万円ぐらいの利益を生み出してくれています。

② 不正をしていた社員を“辞めさせずに、辞めさせる”

空気が変わると、居づらくなる人が自然と去っていきます。
不正をしていた社員、適当に仕事をしていた人たちが、次々に辞めていきました。

結果的に、社員数は半分以下に。 しかし驚いたことに、売上はまったく落ちませんでした。 むしろ、残った人の動きが良くなり、利益率が上がりました。

ここで感じたのは、 「空気を変えれば、人が変わる。人が変われば、構造が変わる。」ということです。

③ 長年の“安すぎる取引”を、適正価格に是正

その会社の主力だった検品業務は、長年続いていたが、ずっと赤字でした。
人件費・電気代・管理費を考慮すると、最低でも時給3,000円相当が必要なのに、実際の取引は時給換算2,000円弱。

相手企業も10年以上の取引先。 「断れない」「仕事がなくなるのが怖い」と誰も言い出せなかった取引でした。

私は即決で、3,000円への価格交渉を行いました。 「無理なら取引停止で結構です」と伝えた上での交渉。 結果──値上げに成功。

これにより、会社は利益構造を一気に改善できました。
規模は縮小したけれど、「利益が出るから次の再生が加速する」という好循環を作ることができました。

空気を整えると、構造が変わる。

この会社では、13年間ボーナスを出したことがなかったそうです。
でも、私は1年目で、ほんの少しですがボーナスを支給できる会社に戻しました。

これは、単なるコスト管理の話ではありません。
「空気を整えると、良いものが入り、悪いものが出ていく」という流れが生まれたからこそ、再生できたのです。

カビ取りでも、企業再生でも、構造は同じ。
黴が生える空間には、共通する“理(ことわり)”がある。 それを読むことで、私は数字を動かしてきました。

この再生の体験が、私の“構造を読む”という思考の原点です。

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